私は聴覚障害があります。
でも、それを理由に「できない」と思うことが好きではなくて。
だから子どもの頃からずっと、「障害があっても、みんな(健常者)と同じようにできるんだ」と思いたくて、証明したくて。みんなと同じでいることに必死で生きてきたように思います。
ろう学校には行かず、小学校・中学校・高校もすべて、普通学級。
専門学校も、周囲に障害者はいない環境でした。
「お前耳遠いなぁ〜(笑)」って笑い者で良いから、ただみんな(健常者)と一緒にいられるように、遠目に見れば“みんな(健常者)と同じ”に見えるように、そう振る舞うことに全力でした。
社会に出てからも、「障害者」だからって甘えちゃいけない、「普通に働ける私」でいなきゃって、一人で気張って、一人で戦ってきました。
だからこそ、その“意地”があったからこそ、自分で“バリキャリ”と名乗ってもいいくらい、やってこれたんだと思います。
・アパレル会社A 正社員 3年
・アパレル会社B 正社員 2年
・銀行 事務員 契約社員 3年
→後、嘱託社員 5年
→後、結婚出産 退職
でも、それは同時に、ずっと背伸びし続けていた人生でもありました。

崩れ始めた「私らしさ」
あるときから、少しずつ歯車が狂い始めました。
無理が続いたのか、脳の病気を発症し、元々の難聴もさらに重度になりました。
“聞こえない”
“このまま何も聞こえなくなっちゃうの?”
そんな日々の中で、夫婦関係にも溝ができ、離婚することになりました。
これからは、女手ひとつで子供たちを育てていかなくてはいけない…。シンママであり、障害者であり、でも働かなくては…。でもでも、今のこの障害レベルの私に何ができる?こんな状態で働ける…? ドン底でした。
背伸びして生きてきた30数年、気張っているのが当たり前な人生で、なんとかやってきた私、でも、もう、どうにも、頑張っても何もできない私になってしまった…どうする…どうしたら…
そんなとき、ハローワークの障害者相談窓口で「就労移行支援」というものを教えてもらい、知ることができました。
就労移行支援とは?
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のある人のための福祉サービスです。働くために必要なスキルや生活リズムを整えながら、職場体験や履歴書の書き方、面接練習などのサポートを受けられます。利用期間は原則2年間で、ハローワークなどと連携しながら就職活動を進めていきます。
障害のある人のための福祉サービス…。
よくわからないけど、やってみるか。何でもやってみよう!じゃなきゃ、何も始まらないし、子供たちを育てていけない!
そして、就労移行支援というものを始めてみることにしました。
就労移行支援に通う立場になったとき、最初は正直、不安と抵抗がありました。
「こんな場所に来るようになるなんて」
「私はもっとできる人だったはずなのに」
「障害のある人との接し方は…?」
そんな思いが、ずっと心を締めつけていました。
でも…
そこは、見た目には“普通”の人ばかりで、「本当に障害のある人たちの場所なの?」と思うくらい“普通”の場所でした。とても温かくて、心地よい空間でした。同じオーラの人がいた。背伸びしてる人なんていなくて、その必要もなかった。私も気張るのをやめてみたら、胸の底からの呼吸ができた。
通所を続けるうちに、少しずつ気づいていきました。
「あぁ、もう、背伸びしなくていいんだ」
「今までの私、無理して“普通”に合わせなくていいんだ」
って。
私は、「障害者である自分」を否定していたのかもしれない。自分で自分を受け入れきれていなかったのかもしれない…。
社会の中で「健常者のフリ」をすることが、ずっと自分を守る唯一の方法だったから。
でも、本当に必要だったのは、自分の“弱さ”や“しんどさ”を認めることだったのかもしれません。
就労移行支援の職員さんや仲間たちとの関わりの中で、
「助けてもらうこと」「誰かに頼ること」「弱音を吐くこと」は、
恥ずかしいことでも、ダメなことでもないと知ることができました。
今の私は、バリキャリじゃないかもしれない。
でも、「ありのままの私」を受け入れられるようになったという点では、
たぶん昔よりも、ずっとしなやかで、ずっとずっと強い。

自分の歩いてきた道に、誇りを持って
「障害者ながらバリキャリと自負していた私が、底辺に落ちるまで」
この言葉には、私の過去と現在、そしてこれからの決意が詰まっています。
一見ネガティブに聞こえるかもしれないけど、私にとってはすごくリアルで、
「もう一度ここから始めていい」
と、自分を許せたきっかけでもあるんです。
人生は、一本の道じゃない。
何度転んでも、何度立ち止まっても、自分のペースで歩き直していい。いつでも方向転換できる。
そして、どんな場所にいても、どんな自分でも、自分の人生に胸を張って良い、誇りを持って良い。
そうやって、私は今、背伸びせず、深く呼吸ができる場所で、のびのびと生きています。
これまでの努力も、迷いも、後悔も全部ひっくるめて、私は私。
そして、
これからまた、
私なりの未来を作っていくつもりです☆^^☆